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2006年4月9日 - 2006年4月15日

2006年4月13日 (木)

戦後沖縄キリスト教史講義 ガイダンス

今年度のK女学院大学での沖縄キリスト教史(キリスト教学)の講義がはじまった。きょうは初日ということで、ガイダンスの後、講義概要の説明を一部行った。ガイダンスでは“二”悶着ぐらいあった。その場の学生がまだわたしの講義をとると決めたわけではない。「試聴期間」というらしい。つまり、学生は試しに聞いているということだが、何を聞いているのか、あるいは、何を聞きたいのかは、わかっている。試験のことと単位のことだ。でも、こちらとしては、できることなら講義の内容に興味を持っている者に聞いて欲しいと思っている。

さて、講義ガイダンスの内容は………


【“単一”のキリスト教と、“
いくつも”のキリスト教】
まず、わたしの考えるキリスト教史について話した。そうすると、キリスト教は理念的にはひとつだが、キリストに何を期待するか、どんな信仰を告白するかでいくつかのキリスト教に別れる。それは、キリスト教史でいわれている「教派」とは違う。

講義がはじまる前に喫茶店で本田哲郎『釜ヶ崎と福音ー神は貧しく小さくされたものと共にー』(岩波書店、2006年)を読んだ。同書の冒頭にホームレスの炊き出しにならぶイエス・キリストの絵を示して、キリストは食事を配るところに立っているのか、その食事をもらう人の群れと共に立っているのかという問があった。そのことも話した。キリスト教の模範的な理解としては、キリストは食事をもらう人の群れに立っているということだ。しかし、教会はしばしば配る場に立っていてそのことに気がつかないことがあること。そうした群れと共にあるということは簡単だが、実行することはものすごく難しいこと。そんなことを話した。

この“単一”キリスト教と“いくつも”のキリスト教は、この講義の重要なテーマになる。


【地域社会とキリスト教】

教会は、地域社会に建(立)っている。だから、わたしのキリスト教史はキリスト教、教会、信徒の歴史ということだが、わたしのキリスト教史は、それらのみを対象としない。それらと社会、特に地域社会とその住民(多くの場合非キリスト者で、反キリスト教論者もいる)とのかかわりを丁寧にみていく。地域社会は、伝道の最前線でもあり、異文化接触・激突の現場でもある。だから、当然キリスト教徒地域社会は摩擦・衝突・対立・迎合・感化・癒着等々のさまざまな関係を持つことになる。このような関係に着目することで、そのキリスト教の思想や質が判断出来ると考えているが、なかなかそれを実証することは簡単ではない。とっても骨が折れる。しかし、それができれば、学生たちはとっても面白いと思わないだろうか。

地域社会は平信徒の生活の場でもある。しかも、日本の地域社会のなかではキリスト教徒はマイノリティである。マイノリティであるが、一部には社会的地位が高かったり、社会的影響力が大きい人もいることはいる。で、マイノリティとして地域社会に生活しているキリスト教徒の立場で歴史を論ずる視座を確立するためには、キリスト教の理念や理想を語りつつも、それが実際の生活の中でなかなか実現
出来ない現実についても目を閉ざさないで見ていきたいと思う。


【キリスト教の歴史的検証】

キリスト教史はキリスト教の史学だから、キリスト教を分析の対象として、教会や信徒、キリスト教界がやってきたことを歴史的に検証しなければならない。同時に戦後沖縄の地域社会という歴史的現実に直面したキリスト教も論じなければならない。だから、この講義では聖書の教えはとても素晴らしくて、その素晴らしいことを信者や教会はいかに忠実に地域社会で実践しているかを論じることは絶対にない。むしろ、キリスト教が歴史的現実のなかでいかに聖書の教えから逸脱していったかを検証し、キリスト教の原理そのもの陥穽について論じていければと思っている。

そこでは、歴史分析の題材に事欠かない。キリスト教の内部に存在するインターナショナリズムとナショナリズム、戦争と教会、軍事占領とキリスト教、慈善と偽善のはざまにあるキリスト者………。

現実に起こっているキリスト教を取りまく問題とどれだけリンクさせてキリスト教史を論じることができるか。「歴史は、常に現代史」という思いをずっと以て研究してきたのだから、それをどれだけ説得的に学生に語れるかがこの講義の成否を握っている。

そして、そのようなキリスト教の歴史的検証を通じて、学生たちのキリスト教観を変えていければと願っている。信仰を持っている者はその信仰の質を疑うように、キリスト教を疑っている人たちはそれでも信じることの重要さを語れたらと思う。

最後に、例年の通り、二つの質問について小レポートを書いてもらった。
(1)沖縄について知っていることを、何でも、たくさん書いて下さい。
(2)「宗教」や「キリスト教」居着いて、日頃思っていることを率直に書いて下さい。
この2問。結果は、全部公表することはできないが、又自習の講義のはじめに論評するので、それをここでもアップしたい。

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