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2010年11月7日 - 2010年11月13日

2010年11月11日 (木)

わたしたちは、知るべきか。では、何を。そして、いつ。〜尖閣諸島、「ビデオ流出」、民主党政権、そして、最近の世相〜

昨年の「政権交代」以来、民主党は、政権運営に四苦八苦し、傍目にはいかにも素人みたいな、角張った対応をしている様子です。

それを見ていて、ふと、「明治新政府」の発足当時の姿と重なってみていました。世間は、どこもかしこも「龍馬(伝)ブーム」です。旧体制が崩壊し、新体制が発足する前の昂揚した時代の雰囲気が、現在の閉塞状況のなかに生きる人びとの共感を生んでいるのでしょうか。龍馬はもうすぐ死んでしまうけれど、その後にできる社会はさぞかしいい社会になっただろうなぁと、見ている人は幻想を抱くのでしょうか。

しかし、「龍馬」後、戊辰戦争があり、発足した明治新政府は、「政権交代」をしたわけですが、政権発足後は経験のなさや、内紛が次々に起こり、決して安定した政権運営をしたわけではありませんでした。その後の新政策の朝令暮改、右往左往振りを見ると、今日の民主党政権のあり方と重なってきます。新政府ができるまではわりと高い理想もあって、魅力的なマニフェストを掲げていたけれど、欧米列強に包囲され、中国との間にも琉球問題があり、その上、ほとんどよるべき財政もなかったように、政権交代後の明治新政府は内政外交ともによたよたを続けていたのです。それで、龍馬が掲げたような現実的でもあり理想主義的でもあるマニフェストの重要な部分は放棄されたり、当分先送りにされたりします。そのうちに、権力を握ると志も理想も変形して、原初に戻ることなく、戦争につぐ戦争で、1945年の破綻を迎えるのです。

そんなかなでの、尖閣諸島での中国船と海上保安庁の巡視艇の衝突事件のビデオの「流出」です(何日かかかってこの記事を書いているうちに、「わたしがやりました」と名乗り出たひとがあります。本当にどうなのやら)。実際のYouTubeにアップされたビデオを見ました。その感想ですが、それほど驚くような内容ではありませんでした。あれが「衝撃的」という人びとは何がそうなのでしょうか。

わたしは、政府は可能な限り、すべての情報を公開すべきだと考えています。そして、その公開のタイミング(いつ、公開するのか)については、個別の事情によると思いますが、それについても例外のない規則が必要であると考えています。以下は、それを前提に、の話しです。

今回のいわゆる「尖閣ビデオ」問題についてです。例えば、「本当は、海保の巡視艇から中国船に衝突していた」とか、「中国船に巡視艇が追いまわされている」とかいう事実を隠して、「中国船が巡視艇に衝突した」と政府が発表していたのなら、確かにそのようなビデオは「ビデオ」は衝撃的です。政府のウソが明らかになるのですから。でも、政府の発表とほぼ同じことがくだんの「ビデオ」に写っていたのですから、「やっぱりな」程度のことです。

人間隠されると、見たがるのは人情というもので………。加えて、初心者マークの政権を国民は危なっかしくみていたものだから、たいしたことないビデオが「衝撃」になったのでしょうか。まるで、国民は過保護の親で、マスコミは嫁いびりをする姑や小姑のようです。もう何10年も政権を担当してきた政府(例えば、前の自民党中心の政権です)ならば、国民のなかに妙な信頼が生まれていて、ここまでいわれることはなかったのではないでしょうか。

ようするに、ことの本質はビデオの中身ではなくて、政権への信頼性なのですが、できたばかりの組織は、わたしたちみなでとことん批判し、対案を出し、議論し、鍛え上げなくてはならないのです。先述の明治初期の事例では、自由民権運動がその役割を担っていきました。しかし、その運動の内部にはリベラルな面とナリョナリスティックな面が同居し、そこで結集しかけた幅広い階層が共有する理念が結局構築できずに、ある者(集団)は権力の側に吸収され(「土佐派の裏切り」など)、ある者(集団)は放逐され、弾圧されていきました。

さて、21世紀の自由民権運動はまだ生まれていません。そして、世論は政権批判を強めながらますますナショナリズムの方向に引きずられています。経済的な行き詰まりは、その怒りのはけ口をどこかに求めています。自由貿易という世界経済のブロック化もグローバル化と同時に進行しており、まさに、内外ともに第二次世界大戦前夜を思わせる世情になってきています。ここで選挙によって達成された政権交代が挫折し、クーデターにも似た手法で政権が倒れることになれば、その時代思潮はいっそう歯止めがききにくい状況になるのではと、危惧しております。

それで、です。海上保安庁が撮ったビデオはほかにもたくさんあるそうですが、それを全面的に国民に公開すべきだという人がいます。それを見てた上で、どうするのでしょうか。きくところによると、与那国島への陸上自衛隊の派遣が検討されているようです。国民がこのビデオを見て中国はむちゃくちゃな国だから、石垣島にも、宮古島にも、日本軍や米軍を派遣して基地をつくって軍隊を派遣しろというのでしょうか。結局のところ、「船長を帰すな」主義者と同じで、帰さなかったらどうなるのかを考えないで、威勢のいいことを言っている方が声も大きいので、かっこよさそうに見えるけれど、行き着く先は戦争と破壊と焼土と荒廃ですか。

さて、これほどまでに「国民の知る権利」を振りかざしてビデオの「流出」を評価する人たちは、同じように前政権がひた隠しにしてきた問題に対しても、同様に現政権に公開をせまるべきです。ちょっと前に、沖縄返還をめぐる米国との核密約の事実の一端が明らかになったように。そして、わたしたちが隠されているとも思っていないようなことまで、洗いざらい、明らかにされるべきです。「やっぱりな」程度の情報の公開でお茶を濁しては行けません。攻めるのなら、自分たちの政府をつくるために、ぎりぎりとそっちのから押し込んでいこうではありませんか。

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