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2011年9月18日 - 2011年9月24日

2011年9月19日 (月)

「回顧」だけなんて、つまらない。前を向いて歩いて行きたい。(注:のちに若干の訂正あり)

とかく、世の中は、思い通りに行かないものです。学会の帰りに乗ろうと思っていた電車が事故で遅れていて、なかなか目的地までたどり着けませんでした。

さて、学会発表は、だいたい目的地まで到着する目処がついたのですが、ほかのところで結構ストレスのたまる学会でした。特に、最後の講演会。聞いているときには、さほど感じなかったのだけれど、帰りの電車の中で悲しくて、悔しくて、泣けてきました。

「日本キリスト教史研究に従事して─回顧と課題─」

しかし、「回顧」は、本当に回顧だけだった。紹介された先行研究では、ほぼみなさん亡くなっている大家に研究ばかり。最近の若手の研究動向については、遂に「回顧」でも、「課題」でも、一顧だにされてませんでした。つまり、徹底的に無視され、その価値を否定されたのです。そして、もっと悲しいことは、講演者ご本人におそらくその自覚が全くないことです。悪意をもって無視したわけではないだろうけれど、それを否定されたと感じる若手の研究者はわたし以外にも確実にいます。そのような、断絶があらわになりました(なっていないかなぁ。ご本人が自覚されていないのだから)。

その上、これからの「課題」として「歴史心理学」などの手法が必要であると。それを否定するつもりはありませんが、そんなことで「日本キリスト教史」という学問分野が院生の喜んで取り組める学問になるとは、わたしにはとても思えません。

学会とは先行研究を大事にして尊重する場所であると思います。しかし、「尊重する」というのは、そもそもその研究上の価値を認めた上で、あらゆる角度からその業績を点検し、徹底的に批判をすることで乗り越えていくという意味です。これは、どの分野の研究者にとっても共通の了解事項です。

わたしは、この講演者が紹介した先行研究をすべて駆け出しの院生時代に読んでいます。その上で、最初はそれらの偉大な先行研究の手法や研究態度をまねて研究をはじめました。だから、講演者のそれらについての分類や整理は、よく分かりました。しかし、実際にフォールドにはいって研究を展開するようになると、それらの偉大な先行研究のなかにも思い込みによる勘違いや、意図的な歴史的事実の捏造(捏造は言い過ぎかも知れませんが、自分の問題設定にあわせて、むりやり歴史的事実を解釈しようとしていることなどです)などが確認できました。そして、それらの作業と平行して、わたしだけの研究対象を見つけ、そこから独自の手法を編み出そうと試みて、日々もがいていました。その成果は小さくて、進歩も遅々としたものですが、でも、無視をされるようなものでもありません。

批判のない先行研究の整理と最近の研究動向の徹底した無視。

これでは、「日本キリスト教史」の深化などは望みようもありません。ご本人は、誠実に研究をされてきたのだろうと思います。しかし、意図せざるところで、わたしのように屈辱を感じている研究者もいると思うのです。一生懸命自分の課題に取り組んで、成果をあげているのに、そのことが大して評価されず、職にも結びつかない。不安定な生活に、家族をかかえて、犠牲を強いながらも、あきらめきれずにもがき続けている。そんな現実を生きている若手や中堅の研究者がいるのです。そのような研究者の前で、その研究を評価し、それでもなお至らぬ点や新しい課題・展望を示し、その研究者を励ますこと。それが、功成り名を遂げた研究者の役割だと、わたしは思うのですが………。

学会は、先行研究を大事にするけれど、それは、「回顧」ではありません。基本的には最先端の研究を奨励し、協働で取り組んでいく集団です。そして、そのなかで、ひとの連帯をつくり、ひとを育てる機関です。だから、わたしは、年をとっても最先端の研究にトライし続けたい。そして、わたしにそのちからがあるなら、せめて、ひとを見守り、時には叱咤することもあるだろうけれど、ひとを励ましつづけたいと思います。

さあ、もう、終わりかけている研究者のことをあれこれ思うことはやめましょう。植民地の日本キリスト教史はとても面白いと思います。それから、戦争中の、占領地や戦場でのキリスト教を利用した宣撫工作も、もっともっと採り上げられていいテーマです。そして、文書(もんじょ)の字句解釈に拘泥して、それで完結していく研究よりも、その先を拡げていくようなスケールの大きな研究で、お互いに競い合い、切磋琢磨してゆきたいと思います。

涙なんか、流している場合ではありませんね。

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