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2013年1月27日 - 2013年2月2日

2013年2月 1日 (金)

「東アジアキリスト教交流史研究会」設立の経緯

2013年1月25日、26日と神戸学生青年センター(神戸市灘区)で、東アジアキリスト教交流史研究会「第1回ワークショップ in KOBE」が開催されました。

この「東アジアキリスト教交流史研究会」については、昨年はじめから設立についての話し合いがはじまりました。

最初のきっかけは、一昨年のキリスト教史学会の全国大会のときです。このとき、最後の学術講演である著名な日本のキリスト教思想史の研究者が講演されたのです。その方は、日本キリスト教史の研究史の整理をされたのですが、それが1980年代の亡くなった土肥昭夫さんの研究で終わっていたのです。

その方が研究史の切られたその時代に、わたしはちょうどキリスト教史学会に入会し、最初はリヴァイヴァルの研究をしていました。そして、それ以降に入会した若い研究者も、日本キリスト教史に軸足を置きながらも、さまざまな模索を重ねて、新しい研究をしてきました。しかし、それが、学会の講演会の場で全く無視されたのです。講演会だったので、最後の質疑も許されなかったのですが、わたしは、悔しくて、帰りの電車の中で涙がこぼれてきました(これ(「穿ち続ける、ということ」)は、わたしのその時の心情です)。

その後、もやもやとした気持ちを抱えていたのですが、たまらなくなって、中国のキリスト教史研究をされている渡辺祐子さん(同じく、キリスト教史学会に所属。明治学院大学教員)にメールを書き、東アジアを対象とする国境を越えた研究会の結成を呼びかけたのです。

ちょうどその時、徐正敏さん(キリスト教史学会所属、明治学院大学教員)の来日をきっかけにして、徐さんと李省展さん(同学会所属、恵泉女学園大学教員)たちがかつて存在した伝説の「日韓キリスト教史研究会」の復活目指していたいたのでした。

このふたつの流れが一致して、この「東アジアキリスト教交流史研究会」設立の話が急展開しました。

そして、10月には恵泉女学園大学で「東アジアキリスト教交流の未来への展望」というシンポジウムを開催しました。このシンポジウムが実質上の旗揚げになりました。

この成果については、以下の『福音と世界』2013年3月号で紹介されます。

 

12月には「設立趣意書」を公開し、今回のワークショップについての参加の呼びかけを、キリスト教史学会、日本基督教学会、「宗教と社会」学会を中心に行いました。また、『キリスト新聞』に紹介されました(「「東アジアキリスト教交流史研究会」設立 国家の枠を超え歴史的探究 2013年1月26日」)。

このように、短期間のうちに研究会が活動できたことは、ここの紹介した方々だけではなく、本当にいろんな方にお世話になりました。

そして、今回の同研究会「第1回ワークショップ in KOBE」の初日(2012年1月25日)に、研究会の代表になられた李省展さんが正式に研究会の設立を宣言され、参加者の同意を得ました。

今後は、関西と関東の2個所に拠点を置いて、それぞれの地域で研究会を開催します。また、年に数回、全員が集まってワークショップや研究会、シンポジウムを開催する予定です。

次回は、7月26、27日に東京の「在日本韓国YMCAアジア青少年センター」で開催される予定です。

住所:101-0064 東京都千代田区猿楽町(さるがくちょう)2-5-5
JR水道橋駅徒歩6分、御茶ノ水駅徒歩9分、地下鉄神保町駅徒歩7分
http://www.ymcajapan.org/ayc/jp/map1.htm

次回は、研究発表中心になります。若手のみなさん、特に、院生のみなさんの参加とご発表を期待しております。

また、研究会のFacebookページをつくりました。

関心のある方は、以下まで、メールをお送り下さい。
crheacs@gmail.com

最後になりましたが、この研究会の発足を契機に、「中華圏プロテスタント研究会」が組織されました。このように、まず、大学や所属・出身学部、学会を超えて研究者が交流すること。そして、そこで新しく研究分野を開拓すべく、また別の研究会ができればその研究会とゆるやかに連帯しながら研究の裾野を広げていければと思っております。

そして、願わくばキリスト教史研究者が歴史を学ぶことからはじめって、歴史研究者が研究することに耐えうるキリスト教史研究の枠組みができればと思っています。

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2013年1月27日 (日)

「近代日本における日本人の越境とキリスト者の動態」

昨日まで,開催されていた東アジアキリスト教交流史研究会「第1回ワークショップ in KOBE」で発表をしました。

「一国伝道史」ではなく、国家の枠組みを超えたキリスト教史を交流するときにキリスト者の動態は最初に把握しなければならないことではないかと思います。その点で、歴史学の分野ではすでにたくさんの蓄積があります。

例えば、以下の蘭信三氏が編集されたものがそのひとつです。

この本には朝鮮、満洲、樺太、台湾、南洋の各地についての研究論文があります。扱っている時代は、主として戦前ですが、戦後の論考もあります。これらの論考に学ぶところはいくつかあります。

まず、「帝国」としての日本の構造は、内地と外地だけではなく、勢力圏という概念にもとずく地域を措定しなければならないということです。例えば、外地は植民地ですが、勢力圏は旧満州と南洋群島等が含まれます。そして、そのその地域にも、日本人は教会を建てています。また、その大半は日本人教会ですが、そこには少なからず地元の人たちがいて、日本語で説教が行われていたのです。

それから、それらの間の人口移動について、内地と外地の行き来は想定しやすいのですが、実際には外地から外地へ、あるいは、外地から勢力圏へ、等の移動が見られるということです。それから、敗戦による「帝国」の崩壊と人口の還流についても言及されており、その点で外地や勢力圏に建てられた日本人教会の撤退や撤収についても重なりが見られます。

このように、日本人の越境には日本人キリスト者の移動が必然的にともなっており、越境した先での存在形態も「帝国」としての日本のそれと似通ったものになることは疑いもないことではないかと思います。

ところで、本書に触れられていないのは「移民」の問題です。ハワイや米国本土、それにカナダを含めた北米大陸と南米大陸への移民による日本人の越境にともなって、キリスト教をはじめとしていくつかの宗教も「移動」したのです。そして、それらの実態については、他宗教ではすでに研究がある程度進んでいます。

特に、キリスト教の場合、移民の場合、移民先にはキリスト教の社会がすでに成立しており、そこに入っていくということは、先の植民や開拓の場合と意味合いが違います。

それらのことを併せて考えると、キリスト教交流史の視点に立った日本キリスト教史の時間と空間はそのようなときと場所に広がっていきます。

加えて、このような日本人の越境とキリスト者の動態が重なり合い、その縮図となっているのが近代以降の沖縄キリスト教史ではないかと思います。戦後の沖縄キリスト教史は主として米軍との関わりと、本土復帰の文脈でとらえられたのですが、戦前・戦中の歴史はこうしたキリスト教交流史の視点にたつことではじめて分析可能になるのではないかと思っています。

交流史というとこんな本もある。

これは、1960年代後半、その時代に日韓のキリスト者が誠実に向きあった成果である。わたしたちは、それらの成果をふまえつつ、それも「越境」していかなければならない。

そのために、「キリスト教交流史」研究の視座として以下の3つを設定したい。

  1. 「越境」:「一国伝道史」とそれを支えている「地方伝道史観」の克服
  2. 「地域」:地域での教派横断的な歴史叙述と地域形成におけるキリスト教の枠を超えた非キリスト教団体・個人との協働関係の考察と評価
  3. 「学際」:周辺諸科学の成果の援用と学的越境

以上、これから同志のみなさんと語り合い、それぞれ、新しい道を開拓していきたいと思っている。

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