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2014年8月 1日 (金)

研究発表とレジュメ

わたしが運営に参加している東アジアキリスト教交流史研究会で、先日行われた福岡での研究会でのレジュメをネット上で公開するか否かをめぐって、ちょっとした議論があった。研究会としては、正式にこの件について話しをしたわけではないので、これから述べるのは私見である。

くだんの研究会のレジュメが一時ネットに公開されていた。それを知ったときに思ったことは、「アイデアが盗まれないか」という心配だった。発表者のなかには、できれば自分の研究をレジュメの段階で世界に公開し、広く知ってもらいたいと思っている人もいるだろう。一方、レジュメは論文化する前のアイデアなのでなるべく公表されたくないと思っている人もいるだろう。
現実に、研究発表を聴いて、自分のインスピレーションが刺激されたのか、意識的・無意識的にそのアイデアを使って論文を書いてしまう人間もいる、だろう。いくら一生懸命に考えたアイデアでも、誰かに先に論文化されてしまったら、学問的な優先権は盗用者に移り、盗まれた側では立場的に反論もできない研究者もいる、だろう。
まして、修論や博論を控えた院生が、そのような“被害”を受ければ、立ち直れないほどのダメージだろう。くだんの件で、とっさに浮かんだのは、真摯な研究態度で研究発表をしていた院生や学振の研究員、非常勤講師の人の顔だった。
また、それに類することだが、論文をデータで送れとか、PDFで送れとか行ってくる研究者もいる。また、沖縄にも行かずに、沖縄キリスト教史の史料を見せてくれと行ってくる院生もいる。ちなみに、どちらも、面識のない、名前も知らない人がほとんどだ。論文は、図書館で探せば簡単に見つかるものなのに、一体、どんな意図でそんなことを言ってくるのだろうか。全く謎だ。
さて、ここからが、本題だ。
研究発表は、ライブなのだ。
ライブだからこそ生きて、ライブだからこそ意味があるのだ。ライブでないと、発表者の意図も、熱も、苦悩も、見えてこない。つまり、白紙のレジュメからは、そのようなものを得ることはできなのだ。
いま、わたしの本務校は定期試験の真っ最中だが(8月になっても、講義や試験があるのは、人権的にどうだろう)、講義の終盤になると、「あのぉ、4回生なんですけど、就活でほとんど講義に出られたかったのですが、今までのレジュメをいただけますか?」といってくる学生が、時々いる。教員によっては、そのような依頼を断ることも少なくないと聞く。わたしは、一応、わたしはするが、「これがあっても、ほとんど意味はない」と念を押す。
悔しい思いを隠しながら学生に渡す白紙のレジュメに、わたしの想いや熱や、とまどいはこめられていない。もちろん、それを聴いていた学生の感動や驚き、苛立ちなどもこめられていないのだ。くだんの学生は、その白紙のレジュメに書かれていることをこれから暗記するようだ。そのような不耗で全く誰の役にも立たないことをさせてしまう自分の力なさを、ついつい思ってしまう。
講義は………、実際に自分の関心がる中心のテーマをほとんど講義したことはないので、少し違うが。でも、ライブの講義には、伝えたいという想いやどうだろうというとまどい、自分の不完全さに対する呪いなどが、実は、他の者と混じって、少しずつでも、こめられているのだ。しかし、白紙のレジュメにはそれがこめられていない。
さて、本題に戻ると、研究会や学会で研究発表をするときの、自信と不安は、何ともいえない。発表前は、不安で震えていても、話しはじめると、何かが憑依したように自信がみなぎってきて、やがて、熱がこもってきて、身体が熱くなってくる。しかし、白紙のレジュメにはそれがこめられていない。
それから、そのレジュメを論文にして、推敲に推敲を重ね、丁寧に校正していくと、発表と同じ、あるいは、違った熱がそれにこめられていく。
だから、発表を聞き逃したのであれば、その発表者が、それを論文や著書にしてくれることを気長に待つしかないのではないだろうか。

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